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歴史

未知の細菌やウイルスとの戦いは長い歴史があります。2020年に広がった新型コロナウイルス感染症は、死者500万人以上を数え [公表データ1] 世界を大きく揺るがせています。コロナ前を振り返ると、近年で話題になったのは、新型インフルエンザのパンデミックではないかと思います。

新型インフルエンザは、2009年4月にメキシコに始まり、北米、ヨーロッパ、そしてアジアへと感染の連鎖が止まりませんでした。いままで経験してこなかった『新興感染症』との遭遇だったと思います。
我が国では2009年5月に最初の感染が確認され、翌々年には終息を見ました。現在の新型コロナに比べれば、あっけなく終息したようにみえますが、当時は多くの脅威を私たち、医療界に投げかけていました。

ちなみに、新型インフルエンザ・ウイルスによるパンデミックの推定死者は、最大で50万人 [CDC 発表2] で、新型コロナウイルスに比べれば少ないものの、決して小さなインパクトではありませんでした。

この新しいタイプのインフルエンザ・ウイルスは、感染経路として上気道ではなく肺胞がターゲットであることが最大のポイントで、感染が確立するといきなり重症肺炎で発症することが特徴でした。そして、その肺胞をターゲットとした感染の結果、呼吸機能が完全に廃絶するような肺炎を生じることに、私たち呼吸療法を専門とする医療者は驚愕したのを記憶しています。

当時、人工呼吸をはじめとした高度な呼吸管理を専門とする『日本呼吸療法医学会』は、H1N1 インフルエンザ肺炎の重症例について、強い危機感を持ちました。
当時の会長であった落合は、竹田を委員長とした危機管理委員会を設立しました。この委員会は2012年に日本呼吸療法医学会の川前理事長のはからいにより ECMO プロジェクトと発展し、呼吸不全に対するECMO 治療の普及を図ることになりました。

当時の学術集会では、特別セッションが企画され、H1N1 インフルエンザ肺炎についての、病態生理、診断、治療に加えて、重症例における ECMO 治療についての議論が行われました。残念なことに当時の我が国においては、重症呼吸不全に対する ECMO 治療は限られた施設で行われるのみで、その治療成績は欧米での報告から大きく劣るものでした[竹田報告3]

このため、 2012年よりストックホルムのカロリンスカ大学での研修、ならびにイギリス最大の ECMO センターであるグレンフィールド病院の視察と竹田は精力的に最新の ECMO 治療の実態を学ぶこととなりました。

ECMO 治療の国際組織である ELSO (Extra-corporeal Life Support Organization) は、呼吸不全、心不全、心肺蘇生、そして小児特殊例における標準的治療方針を、多くの症例データから紹介していますが、2012年当時、各国の医療事情が大きく異なることから地域ごとの分科会を作り始めていました。

アジア太平洋地域の分科会 (AP-ELCO: Asia-Pacific ELSO) を新設する話があり、竹田、落合、市場、清水がメルボルンで開かれた会議に参加し、我が国もメンバーとして入ることになりました。2015年には、第37回日本呼吸療法医学会学術集会(会長:橋本)と合同で、第2回大会を京都で開催しました(落合が会長、竹田が事務局長)。

2013年以降、厚生労働科学特別科学事業に採用されたことで、ECMO 治療の診療システムの構築(代表:竹田)、レジストリー・システムの開発と ELSO の教科書翻訳・出版(代表:落合)、などの事業が進められました。

一方で、ELSO で行われている重要な事業の一つにハンズ・オン・セミナーがあります。ECMO 治療は、あくまでも医師・看護師・臨床工学技士を核としたチーム医療が必須で、チームとしての不断のトレーニングこそが、良好な治療成績を維持するために必要であるとしています。座学では得られない様々なノウハウを、実践に近いかたちでシミュレーション教育する試みが継続されました。

2013 年に設立された NPO 法人 ECMO Japan (代表理事,落合,副代表,竹田)は、ECMO 治療に特化した教育組織として、関連する企業とも協業しながら、定期的な教育事業を継続してきました。なお、この NPO 法人は、2021 年4月に『日本 ECMOnet』として、新しい組織になりました。(ECMO Japan は、2020年4月より、代表理事が竹田に、監事が落合)。

2020年2月3日に横浜港に到着したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」において新型コロナウイルス感染が確認されましたが、その時点で全世界における現在の大規模パンデミックへと進展するとは想像した人は少なかったと思います。 [厚労省4] 。しかし、ヨーロッパ、米国において重症例が報告され医療崩壊を生じるほどに感染拡大は広がっていきました。

この2020 年の新型コロナウイルスによるパンデミックに対して、ECMO 治療に関する診療情報を、情報共有する団体として、日本COVID-19 対策ECMOnet(通称、『ECMOnet』を竹田が始めました。

これは、ECMO 治療に精通した医師が、学会や病院、地方自治体などの『垣根』を超えて診療支援する組織として形成された任意団体でした。日々、全国で発生する重症肺炎に対して、多くのメンバーからの専門的な情報共有が行われることで、診療支援が可能であり、多くの成果を上げてまいりました。

そして、その社会的意義が大きくなり、法人化が必要と判断され、従来の NPO 法人である ECMO Japan を発展的に融合することが図られました。2021年4月のことで、こうして生まれたのが NPO 法人日本 ECMOnet です。

2020年の感染爆発以来、ECMO 治療に専念した活動を行なってきたため、従来の教育活動を中断せざるを得ませんでしたが、新型コロナウイルスの感染終息後には、再び教育活動を再開する予定でいます。

また、CRISIS(管理リーダー:橋本)というシステムにより、症例登録とデータ解析を行い、治療成績を『COVID-19 重症患者状況の集計』として公開しています(https://crisis.ecmonet.jp) 。
また、集積された貴重なデータをもとにさまざまな臨床研究が実施されているところでもあります。

今回の新型コロナウイルス感染症が収束したとしても、今後も、さまざまな形でパンデミックが、私たち人類の前に立ち現れ、世界や日本の脅威となることでしょう。

ECMOnet は、そうしたパンデミックも含め、今後全国的な医療活動が必要となる際に、その基本的な活動拠点として機能する、持続可能な組織として日本の医療を支えたいと願い、努力を重ねていきたいと思います。どうぞ皆様のご支援を宜しくお願い致します。


[公表データ1] https://github.com/CSSEGISandData/COVID-19
[CDC 発表2] https://www.cdc.gov/flu/pandemic-resources/2009-h1n1-pandemic.html
[竹田報告3] J Anesth. 2012;26:650-7.
[厚労省4] https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_09276.html

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